唐招提寺の鑑真香|千年以上の時を超えて

香には、時を超えて思いを伝える力がある。鑑真香を焚くと、千三百年の昔、はるばる海を越えて日本に仏教の真髄を届けようとした一人の僧の情熱が、ほんのひととき、私たちの心にも灯るような気がする。

歴史の深みと仏教の精神が息づく香り

日本の古都奈良の唐招提寺

奈良の静寂に包まれた唐招提寺。そこに足を踏み入れると、時間の流れがふと遅くなったような感覚にとらわれます。
唐招提寺は、鑑真和上が建立した寺として知られている。苦難の末に日本へ渡った鑑真は、ただ戒律を伝えるためだけでなく、中国医学の薬を持参し医学の知識、処方を日本へ伝授しました。

のちに薬の効能、調合技術は日本漢方となり、その一方で日本独自の香文化としても発展していきました。その精神が息づくこの寺のたたずまいには、華やかさというよりも、静謐な美しさを感じます。

唐招提寺の香り「鑑真香」

鑑真香は鑑真和上を偲び、伝えられた香のレシピをもとに調合されたものだと言われる。

唐招提寺の鑑真香

麝香、沈香、甲貝、甘松香、竜脳、安息香、零陵香などは、今も代表的なお香の原料となっており、もちろん漢方の生薬としても使われています。

満ちる香りに「気」を澄ませる

鑑真香は漢方で使う生薬を中心に調香されているため、複雑な香気がします。お香を焚くと、その瞬間、空間が静けさに包まれる。ゆらりと立ち昇る煙が柔らかく広がり、甘さと渋みの絶妙な調和が漂い始める。沈香の深い香りは、まるで古の記憶を呼び覚ますように、ゆっくりと身体の深い場所へ染み込んでいくようです。

鑑真香を焚く時は、特別な空間で、特別な時間に焚くと良い。ただの香りではなく、気を納め、深い静寂の中で自分と向き合うためのひととき。そうすることで、その香りが持つ本当の意味が浮かび上がってくる。

沈香の効能、降逆の功ありて、破気の害なし。

歴史に裏打ちされた唐招提寺の鑑真香。絶えずに香気は続く。

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