龍脳と墨の香りの効果「書道インセンス」

龍脳と墨の香り

墨を磨るときに漂う香りは典雅を好む人に愛され、昔は天然の白檀(びゃくだん)、龍脳(りゅうのう)、麝香(じゃこう)などを墨に使用していました。奈良では伝統的な墨作りが今でも手作業でおこなわれ、奈良墨を作るときのニカワの強い匂いを緩和するために龍脳で調えるそうです。

龍脳は熱帯アジアに分布するフタバガキ科の常緑高木リュウノウジュの樹脂が結晶化したものです。現代では化学的に合成したものを用いることが多く、クスノキ科からとれる樟脳(しょうのう)にすこし似た香りがあり清涼感のある突き抜けるような香りが特徴です。

書道インセンス
墨を磨るとただよう香り
優雅でいながら突き抜けてくる
その香りは
漆黒の夜空に冴えわたる月光のよう
墨に使う天然の香り

楊貴妃への贈り物「龍脳」

龍脳は産出量がすくないため希少価値が高く中国では上層階級の間で重宝されました。唐代の皇帝が楊貴妃に最高級の龍脳を贈ったという記録もあり「楊貴妃の豊満な容姿から… この香り」と皇帝は身も心もとろけたそうです。

調香するときは龍脳を乳鉢で砕き粉末にしてからごく微量を加えるだけで、全体が華やかで清涼感ある香りに変わるので私は好んで使います。突き抜ける香りの中に柔らかで華やかな香りを持つ香薬です。

龍脳の効果は意識を覚醒させる

薬では「開竅薬(かいきょうやく)」として意識を覚醒するときに使用します。清熱効果もあり腫れもの、喉の痛み、目の充血にも有用です。

竅とは竅=穴(あな)のことで人は九つの穴をもっています。竅は五臓と連動し目は肝、舌は心、口唇は脾、鼻は肺、耳と二陰は腎へとつながり、開竅薬をもちいると内側にこもった邪を外に出す働きをしてくれます。

墨の香り書道インセンス

「龍脳」は覚醒もしますが清熱もしてくれます。墨の香りが好きな人を想像すると…。

邪を受けた精神を浄化させる。
覚醒させ芸術をうむ構えに整える。
墨の香りで落ち着きを感じる時は興奮気味。
墨を磨る時間は静かな心の高ぶりをもたらす道なのかもしれません。

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