蓮は泥の中から育ち、清らかな花を咲かせる。そんな蓮の種子を宿したお香は、焚く人の心気を包み、清浄と復活をもたらしてくれる。
鑑真和上ゆかりの蓮、教えとともに
奈良・西ノ京ロータスロード
奈良の夏、朝の静寂を破るように、蓮の花が開き始めます。この季節、奈良市内の四つの名刹、西大寺、喜光寺、唐招提寺、薬師寺では「奈良・西ノ京ロータスロード」という特別な企画が6月~8月に開催されます。
四つの寺を巡る旅は、蓮の花が朝に開き、夕には閉じるように、心をリセットする時間を過ごせます。
蓮の種子を宿したお香
唐招提寺では、鑑真和上ゆかりの蓮の花が咲き、その蓮の種子を練り込んだお香があります。ひとつは「一重咲の青連」、もうひとつは「八重咲の紅蓮」
青蓮の香気は清らかさ
唐招提寺の「青蓮」は、鑑真和上が中国から持ち込んだ蓮の種子を起源とする特別な品種。夏の季節には美しい花を咲かせ、訪れる人々の目を楽しませています。青蓮の美しさは、華やかさではなく、その清らかさ、透明感にある。
その姿と香りに寄せて創られたお香。瑞々しい上品なフローラル調に、凛とした透明感が加わり、泥の中から生まれながらも、穢れも見せぬ香り。
紅蓮の香気は再生の火
唐招提寺の蓮には、八重咲きの紅蓮が存在します。通常の蓮よりも花弁が多く、鮮やかな紅色が特徴です。泥の中から育ちながら、ひときわ鮮やかな花を咲かせる紅蓮。
紅蓮の香は、幾重にも重なる花弁のように白檀、桂皮、安息香、甘松香の生薬が調香されている。それは、静寂の中で燃えるような気を宿し、まるで祈りの炎を深い場所まで灯すような香り。
白檀の効能、辛散温通、理気の要薬
桂皮の効能、大熱で純陽、命門の火を補う
青蓮と紅蓮。蓮の持つ「清らかさ」と「再生」の象徴に思いを馳せる。