薫玉堂「藍」体験記|六種の香りを文学的に満喫する

薫玉堂の試香「藍」は、六つの個性豊かな香りを通して、京都の街に息づく情景と記憶を静かに呼び覚ますお香です。
小窓からのぞく香色のグラデーションは、まるで雅な絵巻を思わせます。封を開けた瞬間、ふわりと広がるのは少し強めのパウダリーな香り。その瞬間から、心は旅へと誘われます。

火を灯せば、香煙はやわらかに立ちのぼり、香りは澄んだ響きを残しながら室内に溶け込んでいきます。焚き終えたあとも余韻が静かに漂い、時を超えて語りかけてくるような香りの体験が待っています。

薫玉堂のはじまり

日本最古の御香調進所である薫玉堂の歴史は、安土桃山の風が吹く文禄三年(1594年)、京都・西本願寺の門前にて始まりました。本願寺の御用達として薬種商を営み、代々受け継がれてきた「調香帳」には、香木や漢方薬にも用いられる原料、そして秘伝の調香術が克明に記されています。
420年を超える歳月を経てもなお、その香りの系譜は絶えることなく、現代に息づいています。

薫玉堂の試香「藍」

堺町101|古き町家の香りで心を鎮める

京都・堺町で始まった薫玉堂の原点を映す香り。店内に漂う香木や線香、積み重ねられた時間が融合した香りは、日常の中に「小さな結界」を生み出します。

「堺町101」を焚けば、過去と現在をつなぐ時の流れが香煙となって立ちのぼり、心の奥に静けさを運んでくる。
読書に没頭したいときや、思索を深めたいときに焚けば、代々受け継がれた調香の叡智が「品格」として香り立ち、このうえない安心感をもたらします。

美山のレンゲ|春野の香りで安らぎを

里山に咲くレンゲ草を思わせる、白檀を基調に花と草木の気配を重ねた、甘酸っぱく繊細な香り。そっと空気を整え、清らかな余韻を場に添えてくれる一本です。

白檀には「理気調中」という効能があり、気の流れをなめらかにし、心を鎮め呼吸を調えます。
「美山のレンゲ」の軽やかな香りは、室内を清めると同時に、心身を静かに調和へと導いてくれます。

音羽の滝|清流に映る、澄明なひととき

三筋に分かれて流れ落ちる音羽の滝。その水のきらめきを写しとったかのような、涼やかで澄んだ香りです。
香りの立ち上がりはすっきりと爽やか。やがて穏やかな温もりへと移ろい、最後には深い余韻を残します。その変化は、水が陽の光に揺らめき、やがて静かな水面へと溶け込んでいくさまを思わせます。

思考を整えたい時、心を澄ませたい時に、澄明なひとときを運んでくれる香りです。

八瀬の薫衣草|ラベンダーの風で緊張を解く

清楚で柔らかなラベンダーの香りは、心身を癒し、ゆったりとした時間をもたらします。緊張や不安にとらわれがちな日々に、風が吹き抜けるように軽やかな解放感を運んでくれる一本です。

漢方では「薫衣草(くんいそう)」と呼ばれるラベンダー。その香りは、閉じた窓を開け放つように心を解きほぐし、安眠や鎮静へと誘います。

三室戸の蓮|祈りの香りで心を浄める

三室戸の蓮園では、夏の盛りに極彩色の花々が咲き誇り、その景色は極楽浄土のようだと称されます。「三室戸の蓮」の香りは、その花びらに抱かれるような、穏やかで清廉な気配を漂わせます。

淡い香りは、水面に浮かぶ花の静けさを映し、深い湖の底からゆるやかに立ちのぼる祈りのよう。心身を整え、静かな浄化の時を届けてくれます。

宇治の抹茶|一服の香りで静けさと活力を

抹茶に白檀や桂皮を調合した、宇治銘茶を思わせる香り。一服のお茶が心をほぐし、明日への力を静かに宿してくれるような一本です。

ほろ苦さとやさしい甘みが溶け合い、桂皮の持つ陽気が温もりを広げ、生命力を励まします。スパイシーで甘やかな香りは、心をくつろがせながらも、どこか刺激的な余韻を残します。

薫玉堂の試香「藍」。この六つの香りは、京都の気配に触れる時間となり、日常を豊かに彩ってくれるでしょう。

関連記事

PAGE TOP
目次